うららの

春、桜並木。
穏やかな日差しの下、
青い空と白い花のコントラストを見上げると、
いつもあの日を思い出す。
 
それはまだ、中学校に入って間もない頃。
それまでとはだいぶ異なる環境の毎日。
その桜並木の坂道は、学校への道の途中にあった。
 
見知らぬ先輩達が通りすがりに声をかけてくれた一言。
「下向いてないで、前向いて歩きな」
本人達はきっと、軽い気持ちで一言声をかけたんだろう。
友達と笑いながら行ってしまった。
 
どうやら、私は知らないうちに下を向いて歩いてたようだ。
胸を張って前を見ると、そこは桜のトンネルだった。
 
 
それから数ヵ月後。
私はまた、下を向いて歩いていた。
先輩、ごめん。
でも、
地面にはサクラケムシがいっぱいいるんだ。
 
皆さんこんにちは、思い出は毛虫とともに、のmaster bacchusです。